街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その15 潜在ニーズ

貴志さんは多趣味の人ではない。あえていえば、仕事が趣味、と言ったらよかろうか。趣味の旅行に出たときも、頭の中にはいつも不動産の仕事を通じた「まちづくり」が陣取っている。だからだろうか。「PLUS アンカー」がその姿を現したとき、最初の反応は不動産業の経営者そのものだった。

「これ、新しい不動産営業の取り組みに使える!」

である。どういうことか。

あなたはどんな時に不動産会社を訪ねるだろうか? 引っ越し先で家を探す。事務所、店舗、工場を探す。相続した土地を処分する。家を建てたいので土地を探す。不動産投資を始める……。そのほかにも訪ねる目的は多様だろう。多様ではあるが、一つだけ共通したことがある。不動産会社を訪ねることが必要になった、ということである。ニーズが顕在化したのだ。
だから不動産会社を訪ねる人には、はっきりとした目的がある。

「近くまで来たからついでに寄ってみた」

などという人はほとんどいない。それが貴志さんには物足りなかった。不動産とは暮らしの3要素である衣・食・住の「住」にあたる。すべての人の営みに深く関係があるのに、多くの人はよほど必要に迫られない限り、不動産にはそっぽを向いて暮らしている。家や土地を何とかしなければ、という案件が持ち上がっても、

「面倒くさい。そのうち何とかしよう」

というのが普通の人の不動産対処法だ。不動産会社に足を運ぶのは切羽詰まってからである。

いや、普通の不動産業者なら、それでもいいのだろう。顕在化されたニーズだけでも商売はそれなりに成り立っているからだ。
しかし、貴志さんは人と同じことをしたくない。だから独自の不動産経営を目指す人でもある。

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