街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その14 殿様気質

地方都市の不動産屋さんは土地・住宅の売買、賃貸の仲介を主な仕事にするところが多い。だから管理物件をたくさん持つ不動産屋さんが繁栄することになる。自力だけでは業績を思うように伸ばせないと思った不動産屋さんは全国チェーンに加盟して、どんな地方都市でも目につく看板を掲げる。

だが、桐生は独自の道を歩まざるを得ない町である。不動産業の経営も他と同じではダメなのだ。どこにも前例がない自分流の経営手法を生み出さねばならない。

大学を出てすぐ、大手コンビニエンスストアに勤めた経験がある。新規出店を担当する部署だった。たくさんの町に出向き、商店街を歩いて商店主と話した。その中で身につけたことがあった。「自店競合は避ける」ということである。既存の店のすぐそばには新しい店は出さない。同じチェーン店同士でお客様を取り合う愚を避けるのは経営の常識である。

しかし、これまで不動産業は平気で「自店競合」を繰り返してこなかったか? 同じ市内に複数のアパートを持つと、多くの場合同じプレハブメーカーに頼むから、ほぼ同じ外観、内装のアパートが建ち並ぶことになる。場所は違えど同じ玄関、同じ間取り。これで入居する人たちは満足するのか?

「デザイン賃貸住宅」を始めた。新しく賃貸用の住宅やアパートを建てる時には、その土地の特徴を最大限に取り入れる。外観は決して奇をてらわず既存の町の雰囲気に溶け込むデザインにする。北に美しい山並みがある場所なら、北向きに大きな窓を開けた。東南の角部屋が最高とされるアパートだが、全体の形状を変えることですべての部屋が角部屋になって日が差す工夫をした。1棟1棟が違った建物になるから手間はかかるが、住む人の満足度は上がるはずだ。

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