街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その7 灯りがともった

客の多い、賑やかな家で育ったからだろうか。角田さんは人が集まってワイワイがやがやする雰囲気が大好きである。だから、捺染業もたたんですっかり人の出入りが少なくなったのが何より寂しかった。いや、自分だけではない。この家もきっと寂しい思いをしているに違いない。

「この家に、なんとか賑やかさを取り戻す方策はないだろうか? 知恵を貸していただきたい」

家と土地を高く売ってくれ、ではない。できるだけ高く借りてくれる客を捜して欲しい、でもない。不動産会社への相談として、角田さんの話は型破りだったろう。

いくら型破りではあっても、持ち主の意向である。アンカーは社員を集めて知恵を絞った。しかし、型破りの問いかけに答を見いだすのは難事である。どう考えても、これだという解決策が出ない。出てくるのは、

「コンビニに貸しては」

「レストランチェーンを誘致しては」

「この家は広い。それに敷地も充分にある。そこで、住宅の外観は変えず、内装に手を入れて高齢者介護施設にする。そして、敷地の隅に小さな家を建てて角田さんには住んでもらう」

その中でいえば、角田さんの家への愛着を考えれば、高齢者用の施設が一番近かったろう。愛着のある家はそのまま残るし、たくさんの高齢者が住み着いて賑やかになるからだ。角田さんも、その計画が最も気に入った。

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