縫製業→ブランドメーカー ナガマサの1

【東京へ】
東京に店を出す。桐生の「EACH OF LIFE THE SHOP」の集客にはそろそろ限界が見え始めていた。縫製業に見切りをつけ、自社ブランド「Season off」を経営の柱にするには、東京出店はいずれ挑まねばならない課題だとはずっと考えてきた。だが……。

1ヶ月考えた。考えに考え抜いた。いずれは出なければならないのなら、これはチャンスではないか? 出るのにいきなり常設店では、いまのナガマサには荷が重すぎる。ポップアップショップなら、例え売れなくてもリスクは小さい。同じ三井不動産の、商業施設担当者が日を違えて2人までも声をかけてくれた。これも何かの縁か? やってみるか?

4月、三井不動産に足を運んだ。名刺を交換した担当者に会って詳しい話を聞くためだ。彼は丁寧に説明してくれた。
出店は最低1ヶ月。
使えるのはコレド室町3の3階で、店舗になっているところか、エレベーター脇のフリースペース。こちらを使う場合はワゴン販売になる。どちらも50㎡ほど。
出店料は耳を疑うほど安かった。そして店の運営には一切口を出さないという。

聞けば聞くほど魅力的な話だった。よし、このチャンスに乗ろう!

「分かりました。是非やらせて下さい。すぐにでも出店させてください!」

ところが、担当者の顔が曇った。

「あ、それでですね。先日お話しした時ならよかったんですが、あの後すぐに空きスペースが埋まりまして。年内は空きがないんです」

体の中で燃え上がった炎を消せぬまま、桐生に戻った。そうか、折角乗ろうと思った船は、わずかの差で港を出ていたのか。諦めよう。諦めるしかない。
だが、一度燃え上がった火はなかなか消えてくれない。秋に東京でポップアップショップが開けるところはないか? 思いつく限り当たってみたが、成果はなかった。

あれは8月のお盆前だった。まだ諦めきれない長谷川さんは、ダメで元々と思いながら三井不動産にメールを書いた。

「年内の出店はやっぱり難しいでしょうか?」

すぐに返事が戻ってきた。

「10月でよければ、1ヶ月間空きが出来ました。出店されますか?」

行動は起こしてみるものである。やっぱり「縁」があったのかも知れない。東京への道が開けた。

「はい、出ます。よろしくお願いします」

10月か。もう8月中旬だ。

「年内は無理と言われていたので何の準備もしていませんでしたから、それからはバタバタでした」

写真:「EACH OF LIFE THE SHOP」の前で長谷川さん夫妻。店を取り仕切るのは妻の美紀さんだ。

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