縫製業→ブランドメーカー ナガマサの2

【ポップアップショップ】
飛ぶように東京・日本橋室町に駆けつけて下見をした。空きが出たのはコレド室町3の3階、店舗型のところである。店舗として使われてきたから什器は揃っていた。これなら棚とハンガーを運び込めばショップになる。事前の費用が抑えられるのはありがたい。

いや、待て。店が出来たとして、誰が売る? 週末は自分が上京しよう。しかし平日は桐生にいなければ本業の縫製が出来ない。それに食事やトイレタイムを考えれば、毎日最低2人は常駐しなければならない。どうしよう?
ふっと思い出した女性がいた。縫製業にCAD(コンピューターでデザインするシステム)を導入した時、使い方を教えてくれた先生である。確か、近々務めを辞めるといっていた。彼女は東京住まいだ。頼めないか?
幸いなことに、彼女は2つ返事で引き受けてくれた。まず1人。

「東京には販売専門の派遣会社がある」

と教えてくれたのは取引先だった。早速連絡を入れると、ベテランの女性を派遣してくれた。これで陣容は揃った。あとは10月1日を待ち、「Season off」ブランドの商品を運び込んで店を開くだけである。

10月1日午前11時。いよいよ店開きだ。この日は長谷川さんも店員である。少しでも商品の見栄えを良くしようと店内を動き回りながら客を待つ。来ない。そういえば、ここに店を開くという広告なんてやってない。数人の東京の知り合いにメールで知らせただけだ。だからかな?
しばらく店番を続けているうちに気が付いたことがある。客が来ないのは自分の店だけではない。そもそも人通りが少ないのだ。思い立ってコレド室町1、コレド室町2を回ってみた。混み合っていた。何が違うのだろう?

「1、2は飲食店が中心なんですね。しかし3はショップが多い。飲食店街には人が詰めかけても、ショップ街にはあまり客足が伸びてこないわけです。しかも3階ですからね」

客があまり来ない訳は分かった。だが、ここで勝負するしかない。だったら、と長谷川さんはある決意を固めた。目先の利益を求めて売ることより、「Season off」のファン作りを優先しよう。
店を手伝ってくれる2人の女性には、商品を売るより、来店客の話を聞くように頼んだ。雑談の相手になってやって下さい。ここに来ればいつでも四方山話が出来ると思ってもらってください。

最初の半月は、慣れない店舗運営もあってバタバタが続いた。だが、それを過ぎると変化が生まれた。まず、派遣の女性が、頼んだわけでもないのにわざわざ桐生を訪ねてきた。「EACH OF LIFE THE SHOP」でコーヒーを振る舞いながら話をした。縫製の工場も見てもらった。
それからである。ボツボツとではあるが、商品が売れ始めた。そしてリピーターまで現れ始めたのである。

「ええ、結果的には1ヶ月と1週間営業したのですが、売上は何と200万円を超えました。店番をお願いした2人の人件費を差し引いても十分黒字が出ました。期待以上でした」

まだポップアップショップを開いているうちに、コレド室町3の客が、桐生の「EACH OF LIFE THE SHOP」にやって来た。店で渡したパンフレットの効果らしい。

「いまでは数十人のお客様が、定期的に遠くから来て下さっています」

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