FREE RIDE ライダーは桐生を目指す その3 青春

同時に、

「やっぱり、年頃になって色気づいちゃったんですかね」

ファッションが気になり始めた。時は1980年代。織都桐生にはまだ、織物で全国の金を呼び集めた栄華の残り香があった。市内にはお洒落なブティックが軒を連ね、着飾った老若男女が市内を闊歩していた。いま桐生は「ファッションタウン」を自称するが、当時の桐生は唱えなくてもファッションタウンそのものだった。二渡さんは、その桐生の空気を胸いっぱい吸い込んで成長したのだから、「お洒落」に目覚めるのも自然なことだろう。

「わざわざ東京まで出なくても、最先端のDCブランドが桐生で手に入りましたもん。ええ、前橋からも高崎からも、ブランドものの服が欲しい買い物客が桐生までやって来る時代でした」

16歳になった。8月の誕生日を待ちかねてバイクの免許を取った。アルバイトで稼いだ金で中古のバイクを手に入れたのは、その年の暮れだった。

バイクにまたがる自分を演出するのにファッションは欠かせない。こうして、自分で選んだライダーファッションを身にまとった少年が、手に入れたばかりの中古のバイクで街を、郊外を疾駆し始めた。我が青春、ここにあり。2つの夢を叶えた二渡さんは自由を手に入れたような気分に酔い痴れていたのに違いない。

まさか、絶大な力で自分を掴んで離さないバイクとファッションが、その後の人生を貫く仕事になるとは、若さを謳歌することに夢中の二渡少年はもちろん気がついていない。

  写真:「FREE EIDE」の店内にはこんなものも。

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