FREE RIDE ライダーは桐生を目指す その2  黒魔術の館

東西に走る末広通りは、桐生市を南北に貫く本町通りと本町5丁目で交差する。この交差点を西に曲がって末広通りをJR桐生駅方面へ約100m。

……。

この店は何だ? 店の前に服を吊したハンガーラックが並ぶ。テーブルに山積みされた服もあるから、きっと洋服屋なのだろう。しかし、衣料品を扱う店はディスプレーに気を遣う。綺麗な服をお洒落に並べれば、美しさが一段と映えるのに、この店は……。

軒下には、丸太を製材したときに出る端材と思える板や曲がりくねった枝が長さも揃えずに打ち付けられている。その上には日本では見慣れないナンバープレートや看板が所狭しと並ぶ。

「DO NOT ENTER」

入るな、ってか!

「DANGER」

この店は危険なのか?

「THE ROLLING STONES WORLD TOUR」

何でローリング・ストーンズ?

店の名前が見つからない。たくさん並ぶ看板の中に店名はないし、シールがベタベタ貼られた入り口のガラスドアにもない。ショーウインドウにはなぜか「Budweiser」や「Harley-Davidson」のネオンサインがのぞいている。その右手にはエレキギターが……。

あった! これが店の名前だな! ショーウインドウのガラスに、白い文字にオレンジ色の影がついたアルファベットで「Free Ride」。しかし、すぐ後ろの「Budweiser」のネオンサインが目立ちすぎて目に入らないし、第一、店名の前にマネキンが立って一部を隠しているじゃないか。これで、この店が「FREE RIDE」だと分かる人がどれだけいるのか……。

ガラス戸を開けて店内に足を踏み込む。

両側に棚があり、たくさんの商品が並んでいるのは当たり前だが、まず通路が狭い。人1人が歩くのがせいぜいだ。

この床は何だ? 長い1枚板がコンクリートで固められているだけではない。板とコンクリートにはボルトや鎖、そしてコンクリートにはドライバー、チェーン、点火プラグ、レンチ、歯車、ブレーキのディスクローター、スプリング、ラジオペンチ……。思いつくままに、バイクの部品や工具が埋め込まれている。

私は、機械文明時代の黒魔術の館に踏み込んだのか?

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です