造色 小池染色の2

【色を産む】
思い起こしてみれば、

「このあたりでいんだろう」

と、どこかで妥協していたような気がする。色を造り出す染め屋としての厳しさが足りなかったのではないか?
それに、染料の色数はどんどん減っている。日本のメーカーが生産基地にした中国で環境問題が起き、閉鎖する工場が増えたためだ。だから出来合いの色は当てにできず、三原色である黄色、赤紫、青緑から必要な色を作る時代になった。あの機屋さんに納めた絹糸も自分で見本通りの色を作ったと思っていた。それが違うという。私の色感は充分育っていないのか。
色は染め屋の生命線である。それが不充分だということは……。

美術展に足繁く通い始めた。色感を鍛えるために、世界中の名をなした画家たちが命を削るようにして産み出した数多くの色をこの目に焼き付けようと考えた。名画を産み出した画家たちはどんな色をキャンバスに表現してきたのか。
子どもの頃から絵に関心を持ったことはない。美術全集なんて開いたこともなかった。だが、足繁く通ううちに少しずつ画家の人生がが自分の中に入ってくるような気がしてきた。

「フェルメールに特に惹かれました。ああ、ゴッホもいいですねえ」

色感を磨いただけでは仕事につながらない。求められる色を作り出すのが染め屋の仕事でなのだ。どんな割合で三原色を混合すると必要な色が出せるのか。前にも増して研究に熱を入れた。

「何しろ、染料はメーカーによって成分が微妙に違うようで、うちで使っている染料で見本で持ってこられた色と同じ色を出すのは容易じゃありません」

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