朝倉染布第9回 伸縮度

その後改良が進んだが、当時のスパンデックスは塩素に弱かった。塩素に触れるとやがてボロボロに劣化する。ご存じのように、プールの水には殺菌剤として塩素が含まれている。プールで数回泳げばボロボロになってしまうのでは水着としては失格だ。塩素に強いスパンデックスを創り出さねば水着には使えない。
その研究・開発は素材メーカーである東レ・デュポンが引き受けた。

朝倉染布が託されたのは、スパンデックスとポリエステルでできた生地から競泳用水着としての理想的な「伸縮度」を生み出すことだった。

一口に理想的な伸縮度を生み出すというが、極めて難しい作業である。スパンデックスだけで出来た生地ならまだしも、相手はポリエステルとの混紡である。性格が違う2つの繊維のの相性を見ながら、一方のスパンデックスの伸縮度をコントロールしなければならないのだ。その課題をこなさなければ理想的な競泳用水着の生地に仕上げることはできない。

その難しさの一端でも知っていただこうと、朝倉染布がスパンデックスを使った生地を加工する工程を追ってみた。

生地には、製造工程で油分が付着している。これを取り除かなければ染色加工ができない。まず、界面活性剤を含む60℃〜80℃の温水が入った水槽で生地を洗って油分を落とす。

この過程で、生地は2回も縮む。スパンデックスとはゴムのようなものだから、塩ビや紙のパイプに巻かれた生地をほどくと、まず伸ばされていた分が縮む。さらに温水をくぐらせると、その熱で繊維そのものが収縮する。こうして縮む過程で編み目が均一になってくれる。この工程をリラックスと呼ぶ。

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