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第4回 「冬ソナ」に教えられること

そのドラマは、一国の総理大臣が首脳会談後の記者会見の場で引用されるほどだ。
あまり興味の無い人でも、もはや“一時のブーム”と片づけられなくなっている。
時の人“ヨン様”ことペ・ヨンジュンや日韓観光広報大使にも選ばれたチェ・ジウといった主演陣の魅力もさることながら、隣国との意識距離を縮め、更に理解してゆこうという親近感を抱かせることにも貢献している 昨今のドラマによくある濃厚なラブシーンなどは一切皆無であるし、恋愛劇の割に登場人物とその家族との関わり合いを尊重し、家族愛を掘り下げている。

これを観ていて、何か遠い昔の懐かしく忘れかけていた日本の原風景や先人達を思い出すのは私だけだろうか? 私が注目したいのは言葉だ。
台詞が理屈抜きで綺麗である。この“綺麗”とは上っ面の美ではない。自分の考えや心情をしっかりと表現し、相手の琴線に触れ胸を打つ。思わず韓国語を学びたくなるくらいだ。

当然日本のテレビ番組や若者の言い回しを全て否定するものではないが、「オレ、もうマジギレ。超ムカツク。やっぱ、それってウザくない?・・・」の類のよく流れてくる音とは違う。
生命力に溢れる本物の言葉は、健全な発想、創造的な感性、覚悟ある心構え、深い思いやりへと進化する。

数年前、「声に出して読みたい日本語」という本がベストセラーになった。各々のヒットは、私達日本人が待望していた一光の希望とその渇望から来る反動と感じる。
日本にはその響きだけで感動を呼び起こし、自然に涙がこみ上げてくるような世界に誇れる言霊がたくさんある。

“冬ソナ”制作スタッフが「“感動”は世界共通の言語である」と云う。
エジプトやアメリカなどへの世界進出も準備中とのこと。 21世紀、われわれ日本人は世界の人たちとあらゆる局面で取り組む事になる。グローバル時代は盲目的な受け入れや迎合では通用しない。
まず自国の歴史や文化を検証し敬愛し、誇りと謙虚さを持って、自身のアイデンティティーを使命感を持って磨き鍛え直す事が、世界中の人とお互い深く知り合おうとする時の誠意の第一歩と思う。
酷暑の日本にあって、隣人が創ったその冬山のシーンは、爽やかな涼をプレゼントしてくれている。

ぐんま経済新聞 「東毛エッセイ」 平成16年8月26日より転載