FREE RIDE ライダーは桐生を目指す その1 好きこそ

「だったら、自分で作るしかないな」

初めての製品、「RIDERS N-3B」は、バイクライダー用のジャケットだった。それまで定番といわれていたアメリカ生まれのジャケットでは、ハンドルを持つと袖が引き攣れて短くなり、風が吹き込む。首筋も風の進入口だ。腕が動かしにくい。裾が風でバタバタと暴れる。そして、裾からも遠慮なく風が侵入してくる。

「使いにくいと思ったところは全部手を入れたデザインを仕上げて桐生市内の縫製屋さんに縫ってもらいました。縫製が難しい箇所もあって、『こんなデザインじゃ縫えないぞ!』って断られかけたんですが、そこを無理矢理お願いしまして」

二渡さんの記憶によると、店に並べたのは1990年代の半ばのことだ。しかし、所詮地方都市桐生の店舗である。都会と違って商圏人口は微々たるもので、バイクの愛好家も数少ない。加えて知名度もなく、ポツン、ポツンとは売れたが、ビジネスになるとはとても思えなかった。

「売れないなあ」

バイクとファッションが「好き」だから始めた二渡さんのバイクウエアも、筆者のギターと同じ運命を辿りかねなかった。

ところがいま、「FREE RIDE」には、北は北海道から南は九州まで、全国からバイクライダーがやってくる。途中、テントで寝泊まりしながら来る人もいる。連休ともなると、店の前には全国各地のナンバープレートをつけたバイクが数十mにわたって並ぶことも珍しくない。交通の邪魔にならないよう、増え続けるバイクを整理する二渡さんは嬉しい悲鳴をあげる。

「また来ちゃいました」

という常連さんがいる。

「いつかは来たいと思っていて。ええ、夢が叶いました!」

とにこやかに語る初めての客がいる。

いま「FREE RIDE」はバイクライダーの憧れの的、メッカの感すらある。

二渡さんはいかにして

好きこそものの上手なれ

を実現したのだろう? まずは店に行ってみよう。

写真:店の前に並ぶバイク、バイク、バイク……

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