3種の経糸 桐生絹織の3

【出来た!】

一番上に見えるのが3つ目の「玉」

まず、3つ目の「玉」をセットする台を特注した。3つの「玉」からの糸の出し方も考え抜いた上での特注である。
毛羽の問題は、まず糊を考えた。糸を糊で固めて織り、後で洗い落とそう。
だが、うまくいかなかった。ウールに糊をつけると、糊は糸の芯に染み込んで固まり、表面には毛羽が残ってしまったのだ。
では、毛羽を焼いてやろう。ガス焼きという手法だ。ガスの炎の中にウールの糸を走らせて毛羽を焼き、その糸を整経屋さんに出した。

「参った。毛羽は焼けてなくなったんじゃなく、表面で丸く固まってるんだわ。整経を始めたらその固まりが切れて飛んで服の隙間から入り込み、おかげで体中がかゆくなったよ。こんな仕事、2度と御免だからね」

これも駄目か。

最後に行き着いたのは、糸に撚りをかけることだった。ウールとコットンを1mあたり400〜500回撚った。

何とか毛羽の問題はクリアした。伸び方が違う3種の糸のテンション管理も試行錯誤で乗り越えた。同じ密度で織ると緯糸がずれていくので、ウールのところだけ組織を甘くした。織りあがった。

次は染色工程である。

実は、この3種の糸はそれぞれ染料が違う。コットンは繊維に直接付着する「直接染料」で染める。アセテートは「分散染料」、ウールはイオン結合を利用する「酸性染料」で染まる。やむなく、1枚の布に3度も染色を繰り返す。染め屋さん泣かせだ。

最後に「整理」という工程が来る。織り上がった生地にはシワがあったり、幅が揃っていなかったりする。蒸気や熱を使って生地を伸ばしたり縮めたりしてシワを伸ばし、幅をそろえる。ところが、緯糸に使ったレーヨンまで含めれば元々性格が違う4種の糸でできている生地だ。熱や蒸気への反応は糸ごとに違う。仕上げの難しさは容易に想像して頂けるだろう。

何とかできた。注文した問屋さんは展示会に出した。

「評判がよかったんでしょうね。それから数年は毎年かなりの量の注文を頂きました」

これが牛膓さんの原点である。牛膓さんはあれからたくさんの「新作」を産み出し続けている。

「そうなんだよねえ。俺だったら絶対に引き受けないような注文も牛膓君は受けちゃうんだよねえ」

桐生市内のある機屋さんの言葉である。

運命の糸に導かれて、牛膓さんはそんな機屋さんになった。これからも新しい生地への挑戦を続けていくのに違いない。

牛膓さんの作品例:カットジャカードのシャツ

 

写真:工場に立つ牛膓さん

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