街の灯 「PLUS+ アンカー」の話 その16 急増する名刺

「PLUS アンカー」のホームページを見たという大学の先生が訪れたのは2015年のことである。古民家カフェを開きたくて検索していてこの店を見つけたのだという。最初は雑談を交わしただけだったが、先生はやがて「PLUS アンカー」のイベントにも足を運ぶようになり、ある日、

「私ね、学生を連れて桐生でフィールドワークをしたことがあるんです。その時、なぜか天神町1丁目の桐生天満宮あたりの街並みが心から好きになりました。古民家カフェを開くのなら桐生で、と思っています。『アンカー』さんで物件を探してもらえませんか?」

桐生市梅田町4丁目にある、アロマオイルの会社が使っていた土地、建物を「アンカー」の仲介で先生が買い取り、カフェ「そしお」を開いたのは2016年の春のことだった。

すべて手作りの帽子を作る「コンポジション」は、「PLUS アンカー」に出入りする建築家の紹介である。代表の齋藤良之さんは桐生市で縫製の仕事をしていたが、2010年に独立して太田市を活動拠点にしていた。しかし、帽子作りの事業が軌道に乗ると、改めて桐生の力が見えてきた。織都ともいう桐生は、織物、編み物に関する技術が1箇所に集まっている世界でも希有な町である。帽子製造にその技術の集積を活かし、更に飛躍したいと思い始めたのだった。

しかも、桐生市本町1、2丁目の伝建群(重要伝統的建造物群保存地区)の中がいいという。桐生の歴史を肌で感じながら帽子を作りたいのだろう。貴志さんがすぐに動き始めたのはいうまでもない。見つかったのは大正9年(1920年)に建てられた石蔵である。
「コンポジション」はいま、OEM(相手先ブランド)での帽子を作り続ける一方、オリジナルブランド「Usine(ユージーン)」を立ち上げ、ネットで個人オーダーにも応じて業績を伸ばしている。

そうそう、「きりゅう自慢」ですでに紹介した「カフェ ラルゴ」も、「PLUS アンカー」が仲介した。イベントに顔を出した高久保渉、綾子夫妻が

「こんなカフェを開きたいんですよね」

と話したのがきっかけだった。

潜在ニーズを掴む。貴志さんのプランが軌道に乗り始めた。

写真:カフェ「そしお」で店主の平野和弘さんと歓談する川口貴志さん(左)

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