街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その9 ワークショップ

「実は、ワークショップに参加していただいた方々に塗っていただいたところは、あとで職人さんが塗り直していました。ええ、壁全部です。だから、手間も時間も2倍以上かかったんですが、とにかくこのカフェに関わっていただく方を増やしたかったんです。皆さん、大変喜んでいただけましたし、狙い通りでした」

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終えて数日後、参加者に集まってもらってバーベキューパーティを開いた。ビールとジュースで盛り上がった。

ビールを片手に職人さんがポツリと漏らした。

「ほら、俺たち職人でしょ。『先生』、なんて呼ばれたことがなくて。それなのに、子供たちが『先生』って呼びかけてくれた。嬉しかったなあ」

ワークショップは多くの「PLUS アンカー」ファンを生み出した。

壁が出来上がったカフェスペースにエアコンと薪ストーブを入れた。

「薪ストーブって高いんですね。本体だけだとそれほどでもないのに、やれ煙突がいる、あれもこれもないと使えない、といわれて、総額では本体価格の3倍、100万円ほどかかりました。ここで一番高かった設備です」

それでも、改装にかかったお金は総額で約700万円。
お金を稼ごうと始めるカフェではない。採算はトントンになればいい。だから、宣伝は一切しなかった。仲のいい数人の知り合いに

「今度、まちのお年寄りが集まるカフェを開くんだ」

と話したのとワークショップが、宣伝といえば宣伝である。
こうして2014年11月、「PLUS アンカー」はオープンした。

店長は二渡晴子さんにお願いした。雅子さんがカフェを開くかどうかで悩んでいたとき、

「話は分かった。素晴らしいことじゃない。やりなよ、手伝うから」

と背中を押してくれた旧友である。その言葉通り、改装工事が始まった4月には仕事を辞め、「PLUS アンカー」のスタッフに加わっていた。彼女なら安心して店を任せることが出来る。

雅子さんと二渡さんの2人で店に立って「PLUS アンカー」が船出した。初日から数日は

「パラパラッという感じの入りでしたね」

ひっそりとした旅立ちだった。

写真:壁塗りのワークショップ

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