街の灯 「PLUS+ アンカー」の話  その9 ワークショップ

角田さんの引っ越し先が見つかった2014年夏の初めから改装工事が始まった。

今度は、設計士は入れなかった。角田さんの住み慣れた家が、私のカフェに一番ピッタリするという自分の「感」を頼って、自分でラフなスケッチを描き、知人に図面を起こしてもらった。

玄関を入ってすぐ右の、それまでは台所、ダイニング、書斎に使われていたスペースは、各種の教室に使えるよう1つにまとめた。縁側のある8畳と6畳の応接間は間仕切りを取り、縁側を含めた大きな部屋にした。ここが今のカフェスペースである。寝室だった部屋はそのまま畳敷きとし、和風の教室に使えるようにした。仏間は琴の教室に使おうと思った。

改装工事は、すぐ近くにあった、腕自慢の職人さんを紹介するカフェ「ぷらっと」を通じて、すべて市内の職人さんたちに頼んだ。和の味を活かすために漆喰で壁を塗り、新しくキッチンとトイレを作った。

「壁の塗り方」のワークショップを開いたのは改装中のことである。

「みんなに利用してもらうカフェだから、店の内装段階からみんなに参加してもらおう」

と雅子さんが考えた。

「漆喰壁の塗り方、教えます」

とクチコミで宣伝したら、小学生の子供からお年寄りまで、何と300人もの人が集まった。こんな大人数が一度に作業は出来ない。3つのグループに分け、3日間で壁を塗ってもらった。先生は「ぷらっと」を通じてやって来た専門の塗装屋さんである。

毎回100人が小手を持ち、それぞれ割り当てられた部分に漆喰を塗りつける。電気はまだ通じてい

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ない。トイレも出来ていない。それでもみな嬉嬉として働いた。

「なかなか平らにならないんだけど、先生、どうやったらいいの?」

鼻の頭にまで漆喰を塗ってしまった小学生が「先生」に質問する。

「先生、こんなもんでいいかね?」

右手に小手を持って壁の前に立ちはだかるおばあちゃんは、すっかり職人気取りである。

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