さかもと園芸の話 その9 フロリアード

群馬県農政部流通園芸課の職員がさかもと園芸を訪れたのは1990年のことだったと久美子さんの記憶にはある。さて、今度は何を頼まれるのだろう? と応対に出た正次さんに、その職員は切り出した。

「1992年にオランダでフロリアードが開かれます。群馬県としてブースを出展する計画なのですが、ご協力いただけませんか? さかもと園芸の花を是非出展していただきたいのです」

といわれても、正次さんには何のことか分からなかった。フロリアード? それは、いったい何ですか?

しかし、頼まれれば断らない、断れないのが正次さんだ。フロリアードの開催が後1年後に迫ったころから準備を始めた。

群馬県はデザイナーに頼んでブースをトータルにデザインするという。ブースの中に、日本から持っていく青竹で床面積が1坪(3.3m2)ほどのドームを作り、その中にアジサイを展示する。外から見れば、アジサイで出来たドームのように見える仕掛けだ。アジサイは、もちろんさかもと園芸のものである。ざっと500鉢は必要だろう。どの花をどう飾り付けるか。

持ち込むアジサイは「ミセスクミコ」「ブルーダイヤ」「ホワイトダイヤ」の3種類に絞り込んだ。相手は、何しろ花のオリンピックである。最高の出来映えの花を揃えねばならない。途中で傷む花もあるだろうから、交換用の鉢もいる。合計で1000鉢あれば足りるか。開催まであと半年に迫ると、出展用の花の手入れに追われた。

展示の準備風景。正次さんの姿も見える

忙しさに輪をかけたのが防疫だった。花や葉には虫やその卵が付着している恐れがある。鉢物だから土も必要で、ここにも虫が棲息しているかもしれない。日本の害虫をオランダに持ち込むわけにはいかない。薬を使い、低温殺菌を施し、徹底的に防疫をする。その上で、検査官の厳しい検査を受ける。2回行われた検査はそれぞれ数日かかる大がかりなものだった。その間、正次さんは付きっきりで走り回った。

群馬県の担当職員らと一緒に会場に詰めることになった正次さんの目に、群馬県のブースは他のブースよりひときわ立派に見えた。これだけ手をかけたのだ。決して身びいきではなかったはずだ。

写真:フロリアードでの展示

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